研究活動 免疫異常疾患研究室
室長 大島 至郎
基礎研究
関節リウマチにおける破骨細胞活性化亢進の分子機構の解明
テトラスパニンは生体内に広く存在する膜4回貫通型蛋白質(TM4SF)で、CD9、CD37、CD53、CD63、CD81、CD82、CD151など脊椎動物では17種類以上が知られている。生体内での役割についてはあまり明らかにされていない。一方、細胞膜には様々な蛋白質が存在し、それらの蛋白質には膜表面を自由に移動したり、細胞骨格に固定されているものがあるが、他の細胞膜に存在する蛋白質や膜内外の蛋白質会合して複合体を形成することによって、シグナル伝達や細胞接着等の様々な機能を担っている。このような個々の蛋白質ではなし得ない統合した機能をもつ複合体の形成に関わる分子のひとつとてテトラスパニンが注目されている。我々はテトラスパニンCD9が破骨細胞膜上に発現しており、CD9の発現はRANKL刺激(つまり分化/活性化過程)で亢進することを報告した。さらにCD9に対する中和抗体による機能阻害およびsiRNAによるノックダウンにより、破骨細胞分化(多核巨細胞化)が制されることを明らかにした。このことにより、CD9は破骨細胞の多核巨細胞化に重要な分子であり、関節リウマチなどの骨吸収性疾患の治療の標的分子となる可能性が示された。
関節リウマチにおけるレトロエレメントの役割の解析
関節リウマチ(RA)の病因は未だ明らかになっておらず、そのため根本的な治療は確立されていない。レトロウイルスはRNAウイルスの一つで、感染後自ら逆転写酵素の働きによってDNAの形で宿主遺伝子に組み込まれる。個体間で感染し得るレトロウイルスを外来性レトロウイルスと呼ぶのに対して、宿主遺伝子にすでに組み込まれているものを内在性レトロウイルスと呼び、これらをまとめてレトロエレメントと呼ぶ。レトロエレメントは遺伝子に組み込まれることにより、①正常な遺伝子の機能の阻害②サイトカインの誘導③分子相同性による自己免疫の誘導④スーパー抗原の誘導などの機序を介して自己免疫を引き起こすことが想定されている。実際にヒトの関節炎において、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)やHIVの感染によってRAに酷似した関節炎が起こることが報告されており、レトロウイルスが関節炎を引き起こす潜在能力を有することが示唆されている。我々はレトロエレメントのRAの病因との関わりを検討するために、レトロエレメントに特化したDNA chipを用いて、RA病変部の滑膜細胞、末梢血リンパ球、骨髄細胞に存在するレトロエレメントをスクリーニングしている。この研究によりRA特異的なレトロエレメントを明らかにすることは、RAの発症のメカニズムを解明することにつながると考えられる。
現在HERV-Wをはじめとしたヒト内在性レトロウイルスがRA特異的に検出されており、現在解析中である。
(平成18年度科学研究費補助金基盤研究C)
関節リウマチ(RA)におけるガレクチン3・ガラクトース欠損IgGの役割
関節リウマチ(RA)の病態は、自己の免疫グロブリン(IgG)に対する自己抗体であるリウマチ因子の産生と、その結果形成される免疫複合体が滑膜、骨・軟骨、血管壁などに沈着し、炎症を引き起こすといった機序が考えられている。これまでの研究からIgGの糖鎖異常は免疫原性に関わる可能性があり、さらにその生理機能や炎症反応への関与が報告されており、エフェクター機能の発現に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。すでにRA症例の血清IgGでは実際に糖鎖異常が認められることが報告されており、その病因への関与が示唆されているが、現在まで病因への関与のメカニズムにまでふみこんだ報告はない。本研究では分担研究者近藤らの開発した最新の糖鎖解析の手法によりRA症例の血清中のIgGの糖鎖構造を詳細に解析し、これらと臨床データの関連を検討することによってRAにおける糖鎖の役割の解明、診断、予後評価につながるものと考えられる。さらには糖鎖異常を引き起こすメカニズムを分子レベルで明らかにすることはRAの発症のメカニズムの解明につながるものと考えられる。
(阪大近藤昭宏教授との共同研究)
臨床研究
関節リウマチの予後(関節破壊)予測因子の研究
関節リウマチの臨床上の最大の問題点は関節破壊であり、治療のコンセンサスは早期に病態に応じた適切な治療をすることである。そのためには早期に予後(関節破壊)を予測することが必要となるが、残念ながら現在有効な予後/関節破壊のマーカーに乏しいため、治療法の選択に難渋することがしばしばある。
これまで我々は、オステオポンチン(osteopontin)、ガレクチン3(galectin-3)に注目し、その骨破壊への関与について報告してきた。これらの分子は有効な関節破壊マーカーとなる可能性があると考えられ、現在iR-netを活用した国立病院機構28施設間の共同研究で前向き試験を行っている。さらにこれらは治療のターゲットとなりうる分子でもあり、骨破壊における役割について研究を進めている。
(国立病院機構政策医療共同臨床研究 政策医療「免疫異常」)
関節リウマチにおける抗CCP抗体の臨床的意義についての研究
抗CCP抗体とは、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(anti-cyclic citrullinated peptide)、環状シトルリン化ペプチドと反応する抗体である。現在我々は外来を受診した診断未確定の関節炎の患者さんに対して血液検査で抗CCP抗体の測定をし、その経過をフォローすることにより、関節リウマチの診断、予後における有用性を検討している。その結果、初診時抗 CCP 抗体が高値であれば後に RA と診断される可能性が高く、RFを含む他のどの既存のマーカーよりも RA の診断予測において優れていることが明らかとなった。このことは関節リウマチの早期治療を行う上で抗CCP抗体が非常に有用な指針となりうることを示唆する。
ステロイド療法の安全性の確立に関する研究  EBM推進のための大規模臨床研究
自己免疫疾患患者に対するステロイド療法が原因と考えられる有害事象を、(1)有害事象の発生頻度と患者要因、治療要因(ステロイド投与法、投与量など)の関係を明らかにする (2)ステロイド療法に伴う有害事象発生のリスクファクターを明らかにする (3)有害事象を回避するために予防投薬の有用性を検証し、ステロイド療法の安全性を確立することを目的として、国立病院機構で全国規模の解析を開始した。
(国立病院機構EBM推進大規模臨床研究)
関節リウマチ患者を対象とした多施設共同データベースの構築
(国立病院機構政策医療共同臨床研究 厚生労働省科学研究)
スタッフ紹介
◆佐伯 行彦 [臨床研究部長・免疫疾患センター部長・治験管理室長]
◆大島 至郎 [免疫異常疾患研究室長]
◆松下 正人 [リウマチ科医長]
◆辻 聡一郎 [リウマチ科医師]
◆田中 枝里子 [リウマチ科医師]
◆前田 悠一 [リウマチ科レジデント]
◆片田 圭宣 [アレルギー科医長]
◆原田 芳徳 [アレルギー科医師]
◆上野 清伸 [呼吸器科医長]
◆深水 玲子 [呼吸器科医師]
◆西條 伸彦 [呼吸器科専修医]
◆田口 明子 [研究員]
◆北東部 綾子 [研究員]
◆中田 早苗 [研究員]
◆岸本 真紀子 [リウマチ科専任看護師]
◆上杉 祐代 [秘書]
業績(欧文論文)

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