大阪南医療センター整形外科は院長以下7名のスタッフ・2名のレジデントで構成され、大阪府南部・和歌山県北東部・奈良県中西部の基幹病院として整形外科疾患全般と骨折など外傷の診療をしています。
脊椎外科、股・膝関節疾患を対象とした関節外科、手・肘など上肢の疾患を対象とした上肢の外科の3つの専門クリニックがあり、エビデンスにもとづいた高度医療を目指しています。関節リウマチに対しては、内科医による診断・薬物治療と整形外科医による外科的治療を統合して行えるようにリウマチ科が設置されています。また、骨折など外傷患者も積極的に受け入れ、早期の機能回復に努めています。
臨床研究部ではコンピューター支援手術の開発に取り組み、脊椎手術ではナビゲーションシステムを用いて正確な脊椎固定術が行えるようになり、平成16年からは人工関節や骨折整復術にもコンピューター支援手術の臨床応用を開始しています。

当センターでは、整形外科疾患全般と骨折など外傷の診療を行っています。脊椎疾患、股・膝などの関節疾患、慢性関節リウマチ、骨折が多く、人工関節置換術、脊椎手術は年間350例以上行っています。
2002年秋に新病棟が完成し、大部屋でも各室4床で1床あたりのスペースは約8m2と広く、各室にトイレ、洗面が設置されて快適な環境で入院していただけます。近年、脊椎疾患に対する手術、人工関節置換術などには
コンピューター支援手術を導入し、最先端の医療を目指した技術革新にも積極的に取り組んでいます。
平成21年の手術件数は約630件、ベッド数は50床です。脊椎手術、人工関節置換術、慢性関節リウマチに対する手術、骨折に対する手術が中心です。
| 脊椎疾患 |
頚椎症性脊髄症や後縦靭帯骨化症の頚椎疾患に対しては、病巣の部位や拡がりをMRIや造影CTで検討し、椎弓形成術や前方固定術を施行しています。腰部脊柱官狭窄症や椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患に対しては、脊椎の不安定性や年齢、職業などを考慮し後方進入椎間固定術(PLIF)や後方徐圧術、髄核摘出術などを行っています。手術後、ほぼ全例で疼痛や麻痺は軽快し、歩行能力も改善しています。脊椎の転移性腫瘍(癌の転移)には、麻痺の状態や予後を検討して、疼痛や日常生活動作の改善のために積極的に除圧、固定手術や放射線治療を行っています。 |
| 股関節疾患 |
変形性股関節症、慢性関節リウマチ、大腿骨頭壊死症に対する人工股関節置換術や人工関節のゆるみに対する再置換術が中心です。可能な限り自己血輸血を行い、人工股関節置換術はすべて無菌手術室(バイオクリーンルーム)を使用しています。手術後は早期離床、早期社会復帰を目指し、よほどの重労働でなければ前職に復帰できています。初期の変形性股関節症にはキアリ骨盤骨切り術などの関節温存手術、小児の先天性股関節脱臼やペルテス病に対しては装具療法を行っています。 |
| 膝関節 |
末期の変形性膝関節症や慢性関節リウマチに対する人工膝関節置換術が中心です。手術後は出血した血液を回収、洗浄し体内に戻すことで、手術前から強い貧血がないかぎり輸血無しで治療可能です。人工股関節置換術同様、治療成績は安定しており、ほとんどの症例で疼痛や歩行能力は改善しています。早期の変形性膝関節症には高位脛骨骨切り術を積極的に行い、疼痛の軽快、O脚変形の矯正とともに変形性関節症の進行を予防しています。 |
| 慢性関節リウマチ |
股関節、膝関節の他、肘関節にも積極的に人工関節置換術を行っています。またリウマチによる脊椎の変形、麻痺に対する手術や手足の変形に対する手術も多く行なっています。当院では診療科としてリウマチ科が独立しており、整形外科医、内科医が協力してリウマチ患者の総合的な治療を目指しています。 |
| 骨折 |
入院治療や手術が必要な骨折に対しては、近隣の医院や救急から要請があれば、ほぼ受け入れ可能な状態を維持しています。近年、骨粗鬆症にともなう高齢者の骨折が多く、大腿骨頸部骨折、上腕骨近位(肩)や前腕骨遠位(手首)の骨折、脊椎圧迫骨折などです。その他、小児の肘関節周辺の骨折やスポーツによる骨折も多く、月から金まで全日手術可能なことから、手術までの待機期間の短縮にも心がけています。 |
| 新しい治療法 |
- 1)
- コンピューター支援手術
- 2)
- 高齢者の前腕骨骨折(手首の骨折)に対しては、従来1ヶ月以上のギプス固定が必要でそれでも痛みが残存する場合が多くありました。当院では小侵襲手術で骨折部に生体活性セメントを注入し、骨折部で硬化させて骨折部を固定することで、ギプスを巻かずにすぐに動かせる治療に取り組んでいます(臨床試験実施中)。骨折後の痛みも少なく、早期から運動することで機能的にも良好です。
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■コンピュータ・ナビゲーションシステム

当科では、大阪大学で研究開発されている光学式のナビゲーションシステムを臨床応用しています。このシステムは、3次元光学位置センサー(OPTOTRAK system)を利用したもので、マルチスライスCTで撮影した画像から作成される3次元コンピュータモデルを利用します。現在のところ、主に脊椎手術における椎弓根スクリューの刺入に利用しています。このシステムを用いることにより、外科医はコンピュータ画面上でスクリューの現在位置を視覚的に確認しながら、手術操作が可能であり、スクリューの逸脱による合併症の発生を大きく軽減することが期待されます。
さらに、このシステムの特徴は、従来のナビゲーションシステムに備わっている手術器具を追跡する機能だけでなく、手術中に対象とする骨の位置姿勢をリアルタイムに計測し、視覚化することが可能なシステムとなっています。
したがって、手術を行う外科医は、現在の骨の位置関係を視覚的に把握しながら手術を行うことが可能です。
当科では、主に脊椎手術を中心に利用していますが、脊椎固定術などで従来は知ることのできなかった固定する椎骨の3次元位置関係を、手術中に正確に把握することが可能となっています。
大阪南医療センター整形外科では、従来の手術・治療方法だけにとらわれることなく、3次元画像処理技術やコンピュータ工学技術などの先進技術を応用した新しい手術治療法の研究および臨床応用に取り組んでいます。
特に、当科で力を入れているのはコンピュータ工学技術を利用したコンピュータ支援手術やロボット手術です。
では、当研究室での研究テーマおよび臨床利用している手術法についてご紹介しましょう。
■コンピュータ支援手術 (Computer assisted surgery: CAS)
コンピュータ支援手術とは、コンピュータ工学技術を医学(特に外科手術)へ応用し、手術の安全性および正確性を向上させる目的で行われている手術方法です。代表的なものとしては、コンピュータ・ナビゲーションシステムがあります。
当科では、大阪大学で研究開発されている
コンピュータ・ナビゲーションシステムを、脊椎外科手術を中心に臨床利用しています。
また、
コンピュータ・ナビゲーションシステムを用いた手術を、さらに発展させるため
レーザーガイダンスシステムの開発にも協力しています。
■ロボット手術 (Robotic Surgery)
外科手術は、従来から卓越した技術を習得したベテラン外科医によってなされてきました。これに対し、ロボット手術では、緻密で正確な動きができるロボットアームなどを使い、ベテラン外科医と同等あるいはそれ以上に正確かつ安全な手術操作を行えるように考えられている手術方法です。
当科では、未来開拓学術研究推進事業研究プロジェクト
「外科領域を中心とするロボティックシステムの開発」のもとで研究開発されている骨関節手術ロボットの臨床導入を目指しています。
■リンク
コンピュータ支援手術に関連する研究施設、研究プロジェクト、および国内外の学会のホームページを紹介します。
- 日本コンピュータ外科学会
- 日本コンピュータ支援外科学会
■レーザーガイダンスシステム

コンピュータ・ナビゲーションシステムの使用時に問題となるのは、術者(手術を行う外科医)がナビゲーション情報を見るために手元からディスプレイ画面に視線を移さなければならない点です。この動作は、従来の手術方法にはない動きで、術者の手ブレの原因となります。
手術野にナビゲーション情報を直接提示できれば、視線を移動させる余分な動作を軽減できると考えられます。このため、共同研究を行っている大阪大学の研究チームでは、レーザーポインティングデバイスを応用し、鋼線やドリル、スクリューなどの刺入ポイントや刺入方向のナビゲーション情報を術野に直接表示できるガイダンスシステムの開発を行っています。このガイダンスシステムは、当科で臨床使用している光学式コンピュータ・ナビゲーションシステムとリンクして稼動させることが可能であり、レーザー光を使用してナビゲーションシステムからの3次元位置情報を術野に直接表示することができます。つまり、術者は術野から視線をはずすことなく、従来の手術操作と同じようにコンピュータ・ナビゲーションシステムを使用して、スクリューの刺入を行うことが可能となります。
当科では、このガイダンスシステムを脊椎手術を中心に臨床応用するため、大阪大学と共同研究・開発を行っています。上図のごとく、脊椎手術における椎弓根スクリューの刺入ポイントおよび刺入方向を術野に直接提示でき、コンピュータ支援手術の安全性をさらに高めることが期待されています。
今後、このレーザーガイダンスシステムは、脊椎手術だけでなく、様々な整形外科領域の手術への応用が期待されおり、既に大阪大学では股関節手術への臨床使用が行われています。
| 脊椎手術 |
頚椎症性脊髄症に対する脊柱管拡大術(約40例)、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎すべり症などの疾患に対し、後方除圧術、髄核摘出術、後方進入椎体間固定術などを行っています。(約120例) |
| 股関節手術 |
変形性股関節症、慢性関節リウマチ、大腿骨頭壊死症、に対する人工股関節置換術や、人工関節に対する再置換術などを行っています。(約100例) |
| 膝関節手術 |
末期の変形性膝関節症や慢性関節リウマチに対する人工膝関節置換術などを行っています。(約80例) |
| 手の外科手術 |
手指・手関節を含めた上肢の骨折、神経・血管・腱損傷などの外傷に対し、機能再建のための治療を行っています。慢性関節リウマチに対して、関節形成術や、人工肘関節置換術(約40例)を行っています。 |
| 骨折手術 |
上肢・下肢の外傷による骨折や、高齢者の大腿骨頚部骨折、上腕骨・前腕骨折に対して、積極的に手術治療を行っています。(約80例) |
<対象疾患と診療の紹介>
頚椎・腰椎の変性疾患に対してブロックなどの保存治療や手術治療、脊椎腫瘍や外傷に対する治療
| 米延 策雄 院長 |
| 卒業大学 |
大阪大学医学部卒 |
| 学位取得 |
医学博士 昭和60年5月8日 |
| 専門医 |
日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会 |
| 指導医 |
日本脊椎脊髄病学会 |
| 専攻分野 |
脊椎疾患、手の外科、コンピューター支援手術 |
| 海渡 貴司 整形外科医師 |
| 卒業大学 |
大阪大学医学部卒 大阪大学大学院卒 |
| 学位取得 |
医学博士 平成18年3月24日 |
| 認定医 |
日本整形外科学会脊椎脊髄病認定医 |
| 専門医 |
日本整形外科学会 |
| 指導医 |
日本脊椎脊髄病学会 |
| 専攻分野 |
脊椎外科(腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、すべり症、頚髄症など) |
| 藤原 啓恭 整形外科医師 |
| 卒業大学 |
福井大学医学部卒 |
| 専攻分野 |
脊椎外科 |
| 牧野 孝洋 整形外科医師 |
| 卒業大学 |
大阪大学医学部卒 |
| 専門医 |
日本整形外科学会 |
| 専攻分野 |
一般整形外科、脊椎外科 |
<対象疾患と診療の紹介>
変形性股関節症・変形膝関節症・関節リウマチ・大腿骨頭壊死などの手術治療
| 齊藤 正伸 |
骨・運動器疾患センター部長、整形外科医長(併)、 骨・運動器疾患研究室長(併) |
|
| 卒業大学 |
奈良県立医科大学医学部卒 |
| 学位取得 |
医学博士 平成4年5月12日 |
| 認定医 |
日本リハビリテーション医学会 |
| 専門医 |
日本整形外科学会 |
| 専攻分野 |
股関節・人工関節 |
| 萩尾 佳介 リハビリテーション科医長 |
| 卒業大学 |
大阪大学医学部卒 大阪大学大学院卒 |
| 学位取得 |
医学博士 平成15年3月25日 |
| 専門医 |
日本整形外科学会 |
| 専攻分野 |
股関節・人工関節 |
| 小山 毅 整形外科医師 |
| 卒業大学 |
大阪大学医学部卒 大阪大学大学院卒 |
| 学位取得 |
医学博士 平成18年3月24日 |
| 専攻分野 |
関節外科、コンピュータ支援手術 |
<対象疾患と診療の紹介>
関節リウマチの上肢再建、変性疾患や外傷に対する手術
| 秋田 鐘弼 リウマチ科医長 |
| 卒業大学 |
富山医科薬科大学医学部卒 |
| 学位取得 |
医学博士 平成18年1月19日 |
| 認定医 |
日本リハビリテーション医学会、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定スポーツ医 |
| 専門医 |
日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本手の外科学会(評議員) |
| 専攻分野 |
手・肘の外科、リウマチ、マイクロサージャリー |