当科では、肝・胆・膵の癌をはじめ胃癌、大腸癌、食道癌など消化器疾患を中心に甲状腺や乳腺疾患、胆石症、ヘルニア、痔疾患なども含めた広い領域で最先端の外科治療を行っています。また、がん患者の5年生存率の改善を目指す国のメディカルフロンティア戦略の一環として二次医療圏での「地域連携がん拠点病院」に2002年12月に指定されました。特に我が国に多い胃癌、大腸癌、肝癌、乳癌について地域医療機関と密接に連携して継続的に全人的な質の高いがん治療を提供することを目標としています。
がん治療は外科治療、内視鏡治療、化学療法、放射線治療、緩和ケアなど多岐にわたりますが、それぞれの進歩が著しく、各科が個別に対応するだけでは治療方針の決定に際して不十分なことも多くあります。当院では外科医、内科医、放射線科医、病理医、検査技師、認定看護師などその領域の専門家による「キャンサーボード」によって様々な検討をすることで個別化治療を行い、患者さん中心の医療、安全で質の高いがん医療を提供できるように努めています。
2010年の全手術は809件で、悪性疾患の手術件数は胃癌88例、大腸癌92例、肝・胆・膵癌48例、乳癌33例でした。腹腔鏡手術も積極的に行っており、昨年は190例を腹腔鏡下に治療し、その内訳は胆囊摘出術94例、大腸切除術61例、胃切除術31例でした。
■マイクロ波凝固療法:MCT(microwave coagulation therapy)
治療に使われるマイクロ波は、電子レンジに使われているマイクロ波と同じ原理で、マイクロ波が照射された水分子が激しく振動し熱を出します。その熱を利用して肝腫瘍を熱凝固して治そうとする方法です。当院では、田伏克惇副院長が研究開発にあたり、豊富な経験を重ねてきました。腫瘍の局在等により、経皮的、開腹、腹腔鏡下のアプローチがあります。経皮的MCTでは、エタノール局注療法とほぼ同じで、超音波装置を使用して肝腫瘍にマイクロ波電極針を刺入して凝固します。
■原発性肝癌に対する治療成績(1988年〜1998年 外科・内科全症例)
胆石症に行われる腹腔鏡下胆囊摘出術は小さな傷で痛みが少なく、術後の回復も早く癒着も少ないため、現在、世界で一番症例数の多い標準的な手術になっています。
当科では大腸癌や胃癌に対しても根治性を確保した上で積極的に腹腔鏡下手術を行っています。腹腔鏡下手術は通常の開腹手術に比べ内視鏡外科手術特有の技術と経験が必要ですが、当科では日本内視鏡外科学会の技術認定医の指導の下で腹腔鏡手術に精通したスタッフが手術を行っています。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する脾摘術や副腎腫瘍に対する副腎摘出術も腹腔鏡下に行っています。
最近では症例によって、美容上の利点などから低侵襲手術として単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術(おへその1カ所の切開創から手術器具を挿入して胆囊摘出を行う手術)を行っています。
また肝癌に対しては、経皮的な治療が困難な患者さんに対して腹腔鏡下に肝部分切除術やマイクロ波凝固術も行っています。
■腹腔鏡補助下胃切除の様子
腹腔内の様子で超音波メスにより大綱の切離をしています。
乳癌に罹患するリスクは年齢と共に増加し、日本人女性の場合、罹患する確率は20人に1人(欧米は8~10人に1人)で、1年間に約4万人にのぼっています。
このような背景から、当院では乳癌患者に対して乳癌診療ガイドラインにそった次のような検査、治療をおこなっています。乳腺腫瘤で外来を受診される患者さんに触診を含めた診察後に、マンモグラフィー、乳腺超音波の検査をおこない、悪性を疑うときは手術室で超音波ガイド下の針生検を行います。その病理結果が乳癌時にはMRIで病変の大きさ、広がりを診断し、積極的に乳房温存術を施行しています。腋窩リンパ節に転移がないと考えられる患者さんには、がんのリンパ節への転移を見張っているという意味で"見張りリンパ節"とも呼ばれている、センチネルリンパ節生検をおこない転移がなければわきのリンパ節郭清を省略して、腕の浮腫やしびれが起こらないようにしています。手術前後に抗がん剤治療が必要な患者さんで外来での治療が可能な方には、化学療法の専属スタッフのもと、外来化学療法室で、副作用対処も含めて抗がん剤治療を受けられるようにしています。
痔は、直立歩行を始めた人類の宿命ともいえる病気です。 症状が出ないものまで含めると、日本人の成人の3人に1人にみられるといわれています。
羞恥心と、生命に直接関係しないという安易な気持ちから、多量の出血や強い痛みが出ない限り、病院へは行かない方も少なくありません。しかし、自己判断で市販薬を使って漫然と治療されている方の中には疾患が増悪したり合併症を併発してしまうこともあります。また自分では痔だと思っていても、腸の疾患のことがありますので、一人で悩まずにまずは診察を受けてください。
当院では、内痔核に対して、従来の手術治療である切除療法だけでなく、新しい治療方法であるALTA(ジオン注)を用いた硬化療法を取り入れています。ALTA療法の場合、痔核に直接注射を行い、痔を小さく(硬化・縮退)し、痛みや脱出、出血を治します。原則として手術日の前日に入院していただき、手術室にて30分程度の小手術を行います。従来の切除手術に比べて、痛みが非常に少なく、体に優しい低侵襲の治療のため、翌日には多くの方が退院されます。現在までのところ、治療を受けられた方は、ほぼ痔核(いぼ痔)の症状が消失し、満足な治療結果が得られています。しかし、すべてのいぼ痔の方にALTA療法が行えるわけではありませんので、まずは肛門外来を受診していただき、診察の後に治療法を決定し、それぞれの病態に応じて適切な診断、治療をおこないます。
手術手技が安定してきた今日、合併症防止対策は重要な問題です。われわれの対象疾患は、胃癌、大腸癌、乳癌、胆石症などであり、その合併症としては、縫合不全、腹腔内膿瘍、創感染などがあげられます。2004年よりわれわれはこれらの合併症(Surgical site infection:SSI 手術部位感染)の対策を進めてまいりました。
その結果、創の感染率を大腸手術で約3%弱まで減少させることができました。日本の感染症対策に積極的な病院での大腸手術の平均の創感染率が10%であるのに対して、非常に良好な結果であると考えております。また2006年よりSSIサーベイランス研究会に入り、更なる感染症対策を目指しています。
悪性腫瘍については病気の告知を前提とし、患者様のQuality of Lifeを重視し、疼痛緩和や栄養管理などを含めて総合的に行う一方で、各地域の医院・病院と病診連携をとり積極的に行っています。
また緩和ケアチーム(医師、認定看護師、薬剤師、栄養士、心理士で構成)によってがん患者さんの苦痛を軽減し、よりよい生活ができるようにサポートしています。
下の書は江戸時代の俳人である瓢水の句です。
この句は患者さんの最後まで人間らしく生活する気持ちをあらわしています。
この書は,当院の患者様から寄贈して頂きました。
臨床試験とは病気の予防方法や診断方法、治療方法の改善、病気の原因や病気についての理解、患者さんの生活の質の向上を目的として実施される試験です。臨床試験には、大きく分けて新薬としての承認を得ることを目的とした「治験」と「研究者主導臨床試験」があります。研究者主導臨床試験は、これまで厚生労働省で承認された薬、治療法や診断法から最良の治療法や診断法を確立すること、薬のより良い組み合わせを確立すること等を目的としています。
がん臨床試験は、参加する患者さんの治療の利益に対する配慮が最優先されなければならず、科学的、倫理的な面など、質の高い試験の実施が求められています。そのためには、医師だけでなく、様々な試験支援スタッフの存在が不可欠となります。
当センターでは医師だけでなく、がん専門薬剤師、がん臨床試験データマネージャーによる支援により、がん臨床試験の質の向上をめざしています。
詳細はこちら
毎週金曜日午後より施行しております(休日を除く)。
外来にて予約の後、当日指定された時間に西館2階の手術室受付に行って頂きます。
[麻酔方法] 局所麻酔を用いて行います。
[対象疾患] 皮下腫瘍、乳腺疾患など
[服薬内容] 手術に応じて処方させていただきます。
| 数\年度 |
2010年 |
2009年 |
2008年 |
2007年 |
2006年 |
| 手術総数 |
809件 |
777件 |
817件 |
741件 |
790件 |
| 全身麻酔 |
553件 |
593件 |
604件 |
553件 |
460件 |
| 腰椎麻酔 |
111件 |
98件 |
134件 |
125件 |
152件 |
| 局所麻酔 |
145件 |
86件 |
79件 |
63件 |
178件 |
■臓器別
| 臓器\年度 |
2010年 |
2009年 |
2008年 |
2007年 |
2006年 |
| 食道癌手術 |
5件 |
3件 |
1件 |
1件 |
6件 |
| 胃癌手術 |
88件 |
81件 |
88件 |
84件 |
83件 |
| 大腸癌手術 |
92件 |
110件 |
126件 |
125件 |
106件 |
| [結腸癌手術] |
61件 |
67件 |
88件 |
86件 |
65件 |
| [直腸癌手術] |
31件 |
31件 |
38件 |
39件 |
41件 |
| 肝癌手術 |
27件 |
30件 |
24件 |
26件 |
29件 |
| [原発性] |
19件 |
25件 |
18件 |
19件 |
20件 |
| [転移性] |
8件 |
5件 |
6件 |
7件 |
9件 |
| 胆石症手術 |
112件 |
96件 |
97件 |
85件 |
92件 |
| 胆道癌手術 |
14件 |
8件 |
7件 |
7件 |
2件 |
| 膵臓癌手術 |
7件 |
8件 |
7件 |
3件 |
7件 |
| 乳癌手術 |
33件 |
45件 |
31件 |
22件 |
34件 |
| 甲状腺手術 |
11件 |
16件 |
10件 |
9件 |
9件 |
| ヘルニア手術 |
106件 |
113件 |
98件 |
100件 |
103件 |
| 虫垂炎手術 |
32件 |
21件 |
24件 |
25件 |
26件 |
| 肛門疾患手術 |
60件 |
70件 |
68件 |
41件 |
39件 |
| 腹腔鏡下手術 |
190件 |
193件 |
219件 |
169件 |
134件 |
| [胆嚢摘出術] |
94件 |
84件 |
91件 |
79件 |
78件 |
| [胃切除術] |
31件 |
20件 |
28件 |
24件 |
17件 |
| [大腸切除術] |
61件 |
83件 |
94件 |
61件 |
23件 |
| [その他] |
4件 |
6件 |
6件 |
5件 |
16件 |
地域がん診療拠点病院としてがん患者(主要な癌、肺、胃、大腸、肝、乳癌など)の5年生存率の情報を公開する義務があり、胃、大腸、膵頭部、胆嚢、胆管、乳、肝癌の各stage別の5年累積生存率を呈示します。いずれも1989年から1999年(肝細胞癌は1989年から2000年)の外科手術例(内視鏡的・肝腫瘍マイクロ波凝固例を含む)の5年累積生存率で追跡率(術後5年)は94.6%です。
■肝細胞癌の臨床病期別5年累積生存率
| 田伏 克惇 副院長・医療安全管理室長(併)・医療工学室長(併) |
| 卒業大学 |
和歌山県立医科大学医学部卒 |
| 学位取得 |
医学博士 |
| 認定医 |
日本外科学会、日本乳癌学会、日本がん治療認定医機構暫定教育医 |
| 専門医 |
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会 |
| 指導医 |
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医 |
| 専攻分野 |
消化器癌、乳癌、内分泌癌 |
| 堀内 哲也 がん診療連携総括部長・外科部長(併)・栄養サポート室長(併) |
| 卒業大学 |
宮崎医科大学医学部卒 |
| 学位取得 |
医学博士 |
| 認定医 |
日本外科学会、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本乳癌学会、日本がん治療認定医機構暫定教育医 |
| 専門医 |
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器内視鏡学会 |
| 指導医 |
和歌山県立医科大学臨床教授、日本外科学会、日本消化器外科学会、外科感染症学会ICD |
| 専攻分野 |
消化器癌、内視鏡外科、一般外科,外科感染症 |
| 庄野 嘉治 外科医長・がん相談支援室長(併) |
| 卒業大学 |
和歌山県立医科大学医学部卒 |
| 学位取得 |
医学博士 |
| 認定医 |
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本がん治療認定医機がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医 |
| 専門医 |
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会 |
| 指導医 |
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会 |
| 専攻分野 |
消化器外科(一般外科)、内分泌外科 |
| 坂口 聡 外科医長・緩和ケア推進室長(併) |
| 卒業大学 |
和歌山県立医科大学卒 和歌山県立医科大学大学院卒 |
| 学位取得 |
医学博士 平成10年3月 |
| 認定医 |
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |
| 専門医 |
日本外科学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器外科学会 |
| 玉川 孝治 外科医師 |
| 卒業大学 |
韓国慶北医科大学卒 |
| 学位取得 |
医学博士 |
| 認定医 |
日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |
| 専門医 |
日本外科学会 |
| 専攻分野 |
消化器外科(一般外科)、乳腺外科 |
| 石田 興一郎 外科医師 |
| 卒業大学 |
和歌山県立医科大学卒 和歌山県立医科大学大学院卒 |
| 学位取得 |
医学博士 |
| 認定医 |
日本外科学会、日本食道学会、日本がん治療認定医機構がん治療認定医 |
| 専門医 |
日本外科学会 |
| 専攻分野 |
消化器外科、癌集学外科、緩和医療 |
| 谷島 裕之 外科医師 |
| 卒業大学 |
福井医科大学卒 |
| 認定医 |
日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医 |
| 専門医 |
日本外科学会、日本消化器内視鏡学会 |
| 専攻分野 |
消化器外科(一般外科)、消化器癌 |
| 冨永 敏治 外科医師 |
| 卒業大学 |
自治医科大学医学部卒 |
| 学位取得 |
医学博士 |
| 認定医 |
日本外科学会、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本医師会認定産業医 |
| 専門医 |
日本外科学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会 |
| 専攻分野 |
消化器外科一般 |
| 辻本 武宏 外科医師 |
| 卒業大学 |
金沢医科大学医学部卒 |
- 辰林 太一 鳥取大学医学部卒
- 木村 正道 鳥取大学医学部卒